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卒業論文/学士論文

位置情報ゲーム「Ingress」を用いた自治体での観光振興の取り組み―神奈川県横須賀市と東京都中野区の事例研究によるモデル構築―

東洋大学国際地域学部国際地域学科国際地域専攻 1810140082 内田悠貴

<論文構成>

第1章 はじめに

第2章 Ingressについて

第3章 先行文献研究

第4章 研究方法

第5章 研究結果

  1. SNS投稿の検索・調査結果
  2. 横須賀市へのインタビュー
  3. 中野区へのインタビュー

第6章 結論

参考文献

<論文要旨>

本論文のテーマは、神奈川県横須賀市と東京都中野区でのスマートフォンアプリケーション「Ingress(イングレス)」を用いた観光振興の取り組みにおいて、なぜIngressを導入したのか、また、積極的に取り組みを進めている横須賀市と現在は取り組みを行っていない中野区、双方の間に差が生じる要因は何かを研究した。

研究に際して、2017年11月に神奈川県横須賀市と東京都中野区に対して、それぞれインタビューを行った。

その際、共通して質問した項目は「なぜ自治体の観光振興にIngressを導入したか」、「観光振興においてどのような場合にIngressが効力を発揮するのか、Ingressが効力を発揮する条件は何か」、「イベントやキャンペーン成功の鍵は何か」などであり、個別に、横須賀市には「Niantic社の介入の有無によるイベントの盛況度合いに差はあったのか」などを、中野区には「今現在Ingressを用いた観光振興の取り組みを行っていない理由は何か」を質問した。

まず、「なぜ自治体の観光振興にIngressを導入したのか」という質問においては、横須賀市は「取り組み開始当初、Ingressそのものが無料であったことや、取り組み開始以前からプレイしていること」、中野区は「石巻や横須賀でのイベントを参考に取り組みを開始した」が回答であった。

「観光振興においてどのような場合にIngressが効力を発揮するのか、Ingressが効力を発揮する条件は何か」という質問では、横須賀市からは「著名な方やメディアを巻き込んで企画する、予算がない中でも、どのような可能性があるか探す、作品へのリスペクトや作品への愛」が、中野区からは「地域にやる気を持ったプレイヤーがいること、自治体の主要産業が観光であること、観光スポットが適度に散らばっていること」が回答であった。「イベントやキャンペーン成功の鍵は何か」という質問では、横須賀市からは「【模索・発見・企画】を行政が行い、【発展・継続】を地元事業者の自発的な動きによって実行され、【波及】として、ファンコミュニティの形成がされること」が、中野区からは「Ingress×健康、Ingress×地域活性化等、Ingressと何かを掛け合わせること、Ingressに限らず、イベントやキャンペーンに付加価値や魅力を持たせること、事前の情報発信をすること」という回答が得られた。

横須賀市に対する「Niantic社の介入の有無によるイベントの盛況度合いに差はあったのか」という個別の質問では、2015年10月31日のミッションデイ横須賀(1866人)と2016年4月30日の咸臨丸フェスティバルウォーク×Yokosuka Ingress(総来場者数1836人、一般参加者1461人、Ingress参加者375人)を挙げ、Niantic社の介入の有無によるイベントの盛況度合いに差があったことがわかった。

中野区に対する「今現在Ingressを用いた観光振興の取り組みを行っていない理由は何か」という個別の質問では、「当初、石巻や横須賀で活用したイベントが開催されており、中野区の地域特性を活かしやすい取り組みだと感じていたが、公式イベントでの有料チケット販売等のマネタイズ面や地域トラブル等の新聞記事での表出があること。また、住宅都市である中野区では、商業地域のすぐ隣に住宅街があり、住宅街を避けてイベントすることの困難さや歩きスマホなどネガティブな要素も多いため、大きなイベントは難しいと考えている」という回答を得た。

また、横須賀市からは、マネタイズ面の表面化について、「チケット販売は個人のコレクター心を満たすだけのものであったため、取り組み当初からの姿勢は変わっていない」という回答が得られた。これらより、横須賀市と中野区におけるIngressを用いた観光振興の取り組みに差が生じている要因は地方自治体のマネタイズ面への姿勢と都市の性格であると結論付けた。また、横須賀市と中野区へのインタビューを基に、Ingressを用いた観光振興の取り組みに求められる要素を以下のモデル図に示した。

Ingressを用いた自治体での観光振興の要素モデル図
モデル図A Ingressを用いた自治体での観光振興の要素モデル図

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